

2025/9/27
腎臓を守り、透析を避けるための道しるべ:eGFRとクレアチニンから始める生活改善
透析をなんとしても回避したいあなたへ
慢性腎臓病(CKD)と診断され、将来の透析という言葉に不安を感じていませんか?
「eGFRが下がってきている」「クレアチニンの値が高い」—これは、腎臓が発するSOSのサインです。しかし、絶望する必要はありません。多くの場合、腎臓病の進行を遅らせ、透析開始までの期間を延ばしたり、透析を回避したりすることは可能です。そのカギを握るのが、ご自身のeGFRとクレアチニンの値を理解し、具体的な行動に移すことです。
このコラムでは、腎臓の働きを示す重要な指標を理解し、透析を回避するために今日から始められる具体的な生活改善策、そしてそれらに伴うメリットとデメリットを、わかりやすくお伝えします。
1. 腎臓の健康を測る二つのバロメーター:eGFRとクレアチニン
腎臓病の進行度を把握し、対策を立てるために、まずはご自身の検査結果に書かれているeGFRとクレアチニンという二つの指標を正しく理解しましょう。
eGFR(推算糸球体ろ過量:Estimated Glomerular Filtration Rate)
eGFRは、腎臓が1分間にどれくらいの血液をろ過し、老廃物や余分な水分を尿として排出できるかを示す、腎臓の働きを測る最も重要な指標です。
* 意味合い:
* 健康な成人で約100 ml/分程度とされます。
* 値が低いほど、腎臓の機能が低下していることを意味します。
* CKDのステージ分類に使われ、透析開始の目安を判断する際の重要な参考値となります。
* 透析回避への意識:
* eGFRが30 textml/分を下回ると、進行した腎不全と見なされ、透析導入に向けた準備が必要になる場合があります。
* eGFRを下げないことが、透析回避の最大の目標です。
クレアチニン(Creatinine: Cr)
クレアチニンは、筋肉の活動によって作られる老廃物の一種で、通常は腎臓によって血液中からろ過され、尿中に排出されます。
* 意味合い:
* 値が高いほど、腎臓のろ過機能が低下し、血液中に老廃物が溜まっていることを示します。
* eGFRは、このクレアチニンの血中濃度や年齢、性別などから計算して算出されます。
* 透析回避への意識:
* クレアチニンは食事や運動の影響を受けやすいものの、高値が続く場合は腎機能の低下が進行しているサインです。
* 特に糖尿病の方は、血糖コントロールの良し悪しがクレアチニン値に大きく影響します。
2. 透析回避のための具体的な行動策:腎臓に優しい生活へ
腎臓病の進行を遅らせるためには、ただ薬を飲むだけでなく、日々の生活習慣を根本から見直すことが不可欠です。腎臓の負担を減らし、残された腎機能を守るための具体的な行動策をリストアップします。
🚨 最重要行動:食事療法の実践
腎臓は、食事から摂取した栄養素の残りかす(老廃物)を処理する臓器です。食事内容を見直すことが、最も直接的な腎臓への負担軽減になります。
* 塩分(ナトリウム)制限:
* 目標: 1日6 g未満 (重度の場合は医師の指示に従う)。
* 行動: 減塩醤油、出汁や香辛料(レモン、生姜など)の活用、加工食品や外食の頻度を減らす。
* タンパク質制限:
* 目標: 医師や管理栄養士の指示に基づいた適切な量を守る。
* 行動: 肉、魚、卵、大豆製品などのタンパク質を過剰に摂取しない。低タンパク質米などの専用食品を検討する。
* カリウム、リンの管理:
* 行動: 茹でこぼしや水にさらす調理法でカリウムを減らす。加工食品や乳製品、インスタント食品などを控え、リンの摂取を抑える。
💊 必須行動:適切な病態管理と服薬
腎臓病は、しばしば高血圧や糖尿病といった他の生活習慣病と密接に関連しています。
* 血圧のコントロール:
* 行動: 医師の指示通りに降圧剤を毎日欠かさず服用する。家庭で毎日血圧を測定し、記録して診察時に見せる。
* 目標: 一般的に130/80 mmHg未満 が望ましいとされますが、個々の目標値は医師に確認してください。
* 血糖のコントロール(糖尿病性腎症の場合):
* 行動: 医師・管理栄養士の指導に従い、血糖降下薬やインスリン療法を正しく継続する。
* 目標: HbA1cの目標値を守り、腎臓に負担をかける高血糖状態を防ぐ。
🚶 日常行動:運動と禁煙
適度な運動は、血流を改善し、血圧や血糖のコントロールを助け、腎臓に良い影響を与えます。
* 適度な運動:
* 行動: 無理のないウォーキングや水中運動などを毎日30分程度行う。
* 注意: 激しすぎる運動はかえって腎臓に負担をかける可能性があるため、主治医に相談して許可を得ましょう。
* 禁煙:
* 行動: 直ちに禁煙する。タバコは腎臓の血管を収縮させ、腎機能低下を加速させる最大の要因の一つです。
3. 透析回避に向けた生活改善のメリットとデメリット
厳しい食事制限や生活習慣の変更には、患者さん自身の努力と忍耐が求められます。しかし、その努力には大きなメリットがあります。一方で、やり方を誤るとデメリットが生じる可能性もあります。
✨ メリット(得られること)
* 腎機能の維持: eGFRの低下速度が緩やかになり、透析開始までの期間が延長、あるいは透析を回避できる可能性が高まります。
* 合併症の予防: 腎臓病の進行に伴って起こる貧血、骨の病気、心臓病などの合併症のリスクが減少します。
* 体調の安定: 適切な治療と食事により、むくみやだるさなどの尿毒素による不快な症状が改善し、生活の質(QOL)が向上します。
* 医療費の負担軽減: 透析導入後の医療費と比較し、大きな経済的負担の軽減につながります。
⚠️ デメリット・注意点(気を付けること)
* 生活の質の低下(一時的): 特に食事制限は慣れるまで外食や嗜好品を楽しむ機会が減り、ストレスを感じることがあります。
* 低栄養のリスク: 自己流で極端なタンパク質制限を行うと、必要な栄養素まで不足し、筋肉量が減少したり、かえって体調を崩す低栄養状態に陥る危険があります。
* 治療への心理的負担: 厳しい自己管理が求められるため、目標達成できなかったことによる自己嫌悪や、病気への不安が増す場合があります。
* 解決策: 必ず医師や管理栄養士と連携し、無理のない範囲で、個人の腎機能や栄養状態に合わせた適切な制限量を守ることが重要です。
まとめ
慢性腎臓病は、進行性の病気ですが、eGFRやクレアチニンの値に一喜一憂するだけでなく、これらの数値が示すメッセージを理解し、具体的な行動を起こせば、その進行を遅らせることができます。
透析回避の道は、決して楽な道のりではありませんが、腎臓を守るための行動は、血圧や血糖の改善、動脈硬化の予防など、全身の健康を守ることにも直結します。
透析回避のための行動チェックリスト
* ✅ 医師の指示通りの血圧・血糖コントロールを徹底する。
* ✅ 管理栄養士の指導に基づき、塩分・タンパク質の制限を正しく守る。
* ✅ 毎日適度な運動を行い、禁煙を継続する。
* ✅ 自分のeGFRとクレアチニンの値を理解し、定期的な診察を欠かさない。
大切なのは、「諦めないこと」です。今日からできる小さな一歩を積み重ね、医療チームと共に、腎臓を守り抜くという目標に向かって進んでいきましょう。