2025/10/23

ドラッグストアーで売っている薬と腎臓の負担はどんな感じ?

慢性腎臓病を悪化させる市販薬との付き合い方

慢性腎臓病(CKD)と診断され、日々の体調管理に気を配っているけど・・・
食事や生活習慣に注意していても、市販の薬はどうなの?

気づかないうちに腎臓に大きな負担をかけていないかな〜

風邪薬、痛み止め、胃薬、サプリメントなど、医療機関を受診せずに手軽に購入できる市販薬(OTC医薬品)
中には腎臓の血流を悪化させたり、薬の成分そのものが腎臓で処理しきれず蓄積したりすることで、eGFRを急激に低下させ、透析導入を早めてしまうリスクを秘めたものが存在します。

このコラムでは、透析回避という目標のために、慢性腎臓病の患者さんが特に注意すべき市販薬の種類とその作用、そして安全に自己管理を行うための具体的な行動策について、わかりやすくお伝えします。

1. 慢性腎臓病の人が避けるべき「要注意」な市販薬

腎臓は、体内の水分量や血圧を調整する重要な臓器であると同時に、薬の老廃物を排泄する「ろ過装置」の役割を担っています。腎機能が低下していると、特定の成分の排泄が遅れたり、腎臓自体にダメージを与えたりする薬の影響を受けやすくなります。

🚨 腎臓に負担をかける代表的な市販薬成分

分類🚨 腎臓に負担をかける代表的な市販薬成分 主な成分名(例) 腎臓への作用
痛み止め・解熱剤 NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬) (イブプロフェン、ロキソプロフェンなど) 腎臓へ向かう血流を低下させ、腎臓の働きを急激に悪化させるリスクが非常に高いです(急性腎障害)。CKD患者は原則として避けるべき成分です。
漢方薬・生薬 甘草(カンゾウ) (多くの風邪薬、胃薬に含まれる) 血圧を上げる作用(偽性アルドステロン症)があり、高血圧が悪化することで腎臓に負担をかけます。また、カリウム値を上げる成分を含む生薬も注意が必要です。
一部の胃薬 マグネシウムを多く含む成分 腎機能が低下していると、マグネシウムが体外に排出されずに体内に蓄積し、高マグネシウム血症を引き起こす危険があります。
サプリメント 大量のタンパク質やアミノ酸、一部のビタミン 過剰なタンパク質摂取は腎臓のろ過機能に大きな負担をかけます。また、サプリメントに含まれる不純物も腎臓に負担をかけることがあります。

避けるべき理由(透析回避のために)

* 血流低下によるダメージ: NSAIDsなどは、腎臓を守るための血管の働きを邪魔し、腎機能が急激に悪化する急性腎障害を引き起こす可能性があります。
* 高血圧・電解質異常の悪化: 甘草などは血圧を上げたり、体内のミネラルバランス(カリウムなど)を崩したりすることで、間接的に腎臓に負担をかけます。

2. 透析回避のための具体的な行動策:安全な服薬ルールの確立

「頭が痛い」「風邪を引いた」といったときに、市販薬に頼りたい気持ちはわかります。しかし、CKD患者さんにとっては、自己判断での市販薬の使用は大きなリスクを伴います。安全性を確保し、透析を遠ざけるための具体的な行動計画を立てましょう。

1. 💊 すべての薬をリスト化し主治医に報告する:
* 行動: 現在服用している処方薬に加え、使用している市販薬、サプリメント、健康食品のすべてをリストアップし、次回の診察時に主治医(またはかかりつけの薬剤師)に見せ、使用の可否を判断してもらいます。
* 理由: 医師はあなたの腎機能(eGFRやクレアチニン値)に基づき、安全性を判断できます。
2. 💊 薬の購入前に薬剤師に相談する:
* 行動: 薬局で市販薬を購入する際は、必ず薬剤師に「慢性腎臓病であることを伝え、現在飲んでいる薬を見せた上で」相談します。
* 理由: 薬剤師は薬の成分に詳しく、腎臓病患者に比較的安全な代替薬(例:NSAIDsではないアセトアミノフェン系の解熱鎮痛剤など)を提案できます。
3. 💊 薬の説明書(添付文書)を徹底的に確認する:
* 行動: 市販薬の「使用上の注意」欄にある**『してはいけないこと』や『相談すること』**の項目で、「腎臓病」や「腎機能障害」に関する記載がないか、必ず確認します。
* 理由: 記載があれば、その薬は使用すべきではありません。

3. 市販薬に頼らない体調管理のメリットとデメリット

市販薬の使用を控えることは、日々の体調不良を乗り切る上で「不便」と感じるかもしれません。しかし、それはあなたの腎臓を守り、透析を遠ざけるための、非常に大きな自己投資となります。

✨ メリット(安全と安心)

* 腎機能の保護: 腎臓に有害な成分の暴露を避けられるため、急性腎障害やeGFRの急激な悪化を防ぎ、腎機能の安定に繋がります。
* 電解質・血圧の安定: 漢方薬などに起因する血圧上昇や、カリウム、マグネシウムの異常蓄積などの電解質異常のリスクを減らせます。
* 薬の重複・相互作用の回避: 複数の薬やサプリを自己判断で飲むことによる、薬効の重複や相互作用(副作用の増強)のリスクを避けられます。
* 医療費の抑制: 腎機能の悪化による入院や透析導入を回避できれば、長期的に見て莫大な医療費の抑制に繋がります。

⚠️ デメリット・注意点(感じる不便さ)

* 対処の遅れ: 軽い頭痛や風邪の症状でも、すぐに市販薬で対処できないため、症状の我慢や、医療機関への受診の手間が増えます。
* 心理的な不安: 「薬が使えない」という制限が、病気への不安やストレスを増大させることがあります。
* 解決策:
* 医師に安全な頓服薬を処方してもらう: 症状が出たときに備えて、腎臓病でも安全に使える解熱鎮痛剤などをあらかじめ主治医に処方してもらうと安心です。
* 市販薬以外の対処法を知る: 軽い頭痛や肩こりには、休息、温熱療法、軽いストレッチなどで対処するなど、薬に頼らない方法を身につけましょう。

4. こんな時だからこそ薬局を頼って

1. かかりつけ薬局を持つ:
* 行動: 処方箋薬を受け取る薬局を一箇所に固定し、「かかりつけ薬剤師」を決めます。
* 理由: 薬剤師があなたのすべての処方薬、市販薬、サプリメントの服用歴を一括で管理できるようになり、危険な飲み合わせや重複を防げます。
2. 「お薬手帳」を徹底的に活用する:
* 行動: 市販薬やサプリメントも含め、飲んだものすべてをお薬手帳に記録し、病院や薬局に行く際は必ず持参し提示します。
* 理由: 腎臓病患者にとって、服用薬の履歴は極めて重要な情報です。
3. 情報収集源を限定する:
* 行動: インターネットや知人の口コミではなく、主治医や薬剤師からの情報のみを信頼し、サプリメントや健康食品を試す前には必ず相談します。
* 理由: 腎臓病に関する情報は玉石混淆です。誤った情報に基づいて摂取したサプリメントが腎臓にダメージを与えるケースが少なくありません。

まとめ

慢性腎臓病の患者さんにとって、市販薬は「身近なリスク」になり得ます。 特にNSAIDs(痛み止め)など、腎臓の血流を悪化させる成分を
自己判断で使用することは、透析への危険性が高まってしまいます。
透析回避を目指すためには、日々の食事管理や血圧コントロールだけでなく、薬の知識を得ることも大事です。

安全のための行動チェックリスト

* ✅ 処方薬、市販薬、サプリメントのすべてを主治医と薬剤師に報告する。
* ✅ 痛み止め(特にNSAIDs)は、必ず薬剤師に相談し、腎臓病であることを伝える。
* ✅ 症状が出た時のために、安全な頓服薬をあらかじめ主治医に処方してもらう。
* ✅ 薬に関する情報は、専門家(医師・薬剤師)から得ることを徹底する。
「このくらい大丈夫だろう」という自己判断が、腎臓の寿命を縮めることにつながります。今日から「市販薬のルール」を見直し、大切な腎臓を共に守っていきましょう。

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